フジ住宅の訴訟と裁判 第6準備書面

今回もフジ住宅の訴訟・裁判に関する情報をお届けします。

”6 「原告に対する報復的非難・社内疎外を内容とする資料の配付」との主張について
原告は、訴訟提起後の資料配布について、「原告に対する報復的非難・社内疎外を内容とする」ものであり、原告の「人格的自律権」と「職場において自由な人間関係を形成する権利」を侵害するものであると主張する。
この点、「原告に対する報復的非難・社内疎外を内容とする」行為であり違法であるとの趣旨に対しては、被告今井第5準備書面7頁以下と被告会社第5準備書面1頁以下でも述べたとおり、本件は被告らにも十分に言い分もある事案であり、原告側の被告らに対する激しいネガティブキャンペーンにより被告会社のイメージやその従業員の心情が傷つけられている実情にも照らすと、社内にも被告らの言い分を伝達すべき正当性と必要性も認められることを改めて強調したい(なお、訴訟に関する会社の姿勢や従業員らの会社支持の意見を、被告会社が従業員らに伝えようとすれば、そこに原告も含まれることは避けられない。全社員配布の資料について、原告だけ配布対象から外せば、それはそれで差別的取扱いや疎外として非難を受けるように思われる)。
また、原告の行為を対象とした意見論評であるとしても、実名や所属部署などの個人を特定する情報が記されていないとか、過度に侮辱的ないしは人格攻撃的な書きぶりがされていないなどの表現態様にも鑑みれば、十分に法的に許容されうる内容と考えられる。よって、被告今井としては、引き続き強く争う。
繰り返しとなるが、「世間での、提訴を支持し会社を批判してくれる報道や支援運動については、盛大にせよ。しかし、提訴に反発する声や会社を擁護する意見については、社内で従業員らに示したり自分に聞かせたりもするな。それは法的に許されない」というのは、あまりに一方的な主張ではなかろうか。
原告の主張する被侵害利益のうち「人格的自律権」という点は、前記5でも述べたとおり自己決定が害されたという事実が認められないため、その主張は失当である。
「職場において自由な人間関係を形成する権利」が侵害されたとの点については、原告に「職場において自由な人間関係の形成が阻害された」という具体的事実がないことは前記5で述べたところと同様である。
以 上”

次回も第6準備書面について、続きから紹介していきます。

フジ住宅の訴訟と裁判 第6準備書面

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”5 原告の主張する被侵害利益への疑念
被告今井は、前記3(1)において、被告会社の職場環境配慮義務違反という形で原告が訴えている被害の実体は、感情的反感や政治思想的反発であると指摘した。
かかる被害の内実は、原告の主張する「差別的な言動にさらされずに就労する権利、人格的自律権、職場において自由な人間関係を形成する権利」という被侵害利益とは異なるものである。つまり、原告に対しては、「差別的な言動にさらされずに就労する権利、人格的自律権、職場において自由な人間関係を形成する権利」の侵害はない。
具体的に述べると、一般論として、1つめの「差別的な言動にさらされずに就労する権利」というものは「権利」という位置づけや呼び方が妥当なものかはさておいても、そのような法的保護に値する切実な利益が憲法13条の幸福追求権を根拠として認められうることは、被告今井も争うところではない。しかし、前記2で述べたように、被告らが社内配布した資料はヘイトスピーチでも差別助長文書でもなく、法的に許容される政治的意見論評ばかりであり、かつ、原告個人に向けた言論でもなく(但し、「原告に対する報復的非難・社内疎外を内容とする資料の配付」という行為類型に、実名は記されていないものの原告個人を念頭に置いたものが含まれるが、それについては後記6で述べる)、原告が就労の場面において「差別的な言動にさらされた」とは評価できない。
2つ目の「人格的自律権」の侵害という点については、原告主張は、配布文書を閲覧したり、それに文書作成で応答したりすることが、「人格的自律を害する」というものであるが(原告第11準備書面7頁以下)、被告今井としては理解できない。人格的自律権というのは、言い換えると自己決定権であるが、配布文書の記載という他人の表現に触れただけで、仮にその者が不快感を感じたとしても、何ら自己決定が侵されたわけではない。もし、無理矢理に特定の思想内容の文書の作成と発表を強制されたら、自己決定権の侵害が生じるということは考えられるが、原告からはそのようなエピソードは主張されていない。むしろ逆に、原告は自己決定を貫き、例えば、1年目の教科書採択の際は、1か所目のアンケート会場には他の従業員に同行したがアンケートは書かず、さらに2か所目の会場には同行せず離脱している(被告会社準備書面3・11頁以下)。また、「部門長会議資料」については、原告はその所属部署の長である植木副部長に申し出をして配布対象から外してもらっている(被告会社答弁書3頁、被告会社第1準備書面別紙、被告今井第2準備書面7頁、被告会社準備書面3・10頁等)。それらの事実は原告も争っていない。
3つ目の「職場において自由な人間関係を形成する権利」というものも、一般論として、「権利」という位置づけや呼び方が妥当かはともかく、幸福追求権の一環としてその種の法的保護に値する利益があることは被告今井も認める。しかし、本件では、原告に「職場において自由な人間関係の形成が阻害された」という具体的事実は見当たらない。
結局のところ、原告が人格権の侵害という中で主張する3種の被侵害利益は、原告の主観における感情的な不快感、政治思想的な反発の域を超えていないといわざるをえない。”

次回も第6準備書面について、続きから紹介していきます。

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”(4)創業者や企業トップが従業員を全人格的に育成しようとすることの必然性
パナソニックの創業者の松下幸之助は「松下電器は人をつくるところです。併せて電気器具も作っております」という名言を残している。
そのように、日本の実業界には、経営における従業員育成にあたり、「人をつくる」つまり全人格的に立派な人を育て上げようとするとか、「心の持ちようや生き方を指南する」ということが、重要視される風土がある。
被告今井第5準備書面3頁以下でも述べたが、「人格的な面も含めて、人を育てる」という企業での営為においては、内容や程度はさまざまであろうが、一定の思想信条や価値観も含めて伝達するという要素も排することはできない。
本件の配布資料は、一定の思想や政治的見解を内容とするものであるが、企業理念を背景とした従業員の人格面の教育という目的からは、それも許容されると考えられる。
(5)従業員の多くから被告らの企業理念や従業員教育が支持されていること
被告らの示す企業理念や行っている従業員教育は、被告会社内で従業員の多くから支持され、それが従業員の意欲や活力、自社への誇り、会社メンバーの一体感、社風の確立とその対外アピールなどの各方面で、実際に大きな成果を生んでいる。
それを示す一例として、被告会社が全従業員に毎月配布している経営理念感想文から、従業員の「会社からの配布物への感謝」が示されたものを抜粋したものを、証拠として提出する。本件訴訟開始以前の平成26年2月度から平成27年8月度までの19か月分(乙17)と、本件訴訟開始以降の平成27年9月度から同年12月度までの4か月分(乙18)である。
それらを一読すると、被告らの打ち出すメッセージが従業員にも共有され、個々人にとっても被告会社の事業にとっても各側面で好影響をもたらしていることが分かる。そこにも見られる被告今井の経営手法が、現在被告会社が企業として成功を収めている重要な一つの理由なのである。”

次回も第6準備書面について、続きから紹介していきます。

フジ住宅の訴訟と裁判 第6準備書面

今回もフジ住宅の訴訟・裁判に関する情報をお届けします。

” かかる被告今井の考え方からすると、当然、保守的な論調の公刊物上の各種言論に親和性が生じる。それが、被告今井によるそういった内容の資料配布への動機となっている。
留意いただきたいのは、その資料配布も、個人的な主義信条の押し付けというではなく、「顧客を家族同様に考え、品質保障などの顧客サービスを徹底する」という企業理念に密接関連しているという点である。
また、資料配布や福利厚生施策を通じて従業員に働きかける被告会社の諸々の行為も、従業員を家族や同朋として認識し一体感を持ち、ともにこの国で生きていこうという被告今井の思いに由来している。
そのような在り方は、「価値観の伝達」という意味で見方によっては「お節介」と評されるかもしれないが、そういった特色や独自性は、「(従業員との関係における)家族的経営」や「徹底的な顧客本位」という、フジ住宅という企業の特質、強みと不可分一体なのである。
(3)被告会社が取り扱う商品と企業理念の関係
補足的に述べると、被告会社の上記のような企業理念や社風は、被告今井の心情や理想に由来するというだけでなく、被告会社が企業として扱う商品の性質とも必然的な関連性がある。
被告会社は、分かり易く言うと、岸和田というローカルな町で創業した「地場の住宅メーカー」であり、民間住宅すなわち「地域の人々の家」がその基本的な商品である。
その商品の特質としては、被告今井の表現によれば「家族をはぐくむ揺りかご」であり、長いスパンで何代もの家族を支える長期的な資産であり、地域で口コミを中心に支持を広げることが事業展開において重要ということが指摘できる。
転売利益を追求する証券会社や、都市部中心の不動産会社、大規模な土木建築案件を主とするゼネコンなどと比較したときに、取り扱う商品や、関わる顧客層(営業基盤)、視野に入れている時間感覚、アピールポイントなどが全く異なるのである。
被告会社の取り扱う商品のそのような特質からは、短期的な利益重視の姿勢とか、中央や国際重視の巨大ビジネス志向などとは対極の、伝統的、地域密着的な価値観や身近な人々を大事にする姿勢のようなものが重視される傾向が生まれやすい。少なくとも被告今井の中では、そういう自社の事業内容と先述の企業理念は固く結びついている。
そして、そういった被告らの伝統的で土着的な価値観というのは、保守思想と通底するものである。
その意味でも、被告今井がなしている資料配布は、単に個人的な思想信条の喧伝ではなく、企業理念と結びついた従業員教育として評価されねばならない。”

次回も第6準備書面について、続きから紹介していきます。